2022.9.24 その他
相続Q&A 遺言3
Q | 全部相続させる遺言について説明してください。 |
A | 遺言者が特定の相続人に全財産を相続させる趣旨の遺言をいいます。 |
Q | 割合的相続させる遺言について説明してください。 |
A | 指示された共同相続人に対し、遺産のうち指定された割合による価値に相当する財産を取得させることをいいます。できるだけ具体的に財産を列挙し、不動産については「各2分の1の特分割合による共有として相続させる」としたり(?)、株式については「AとBに株式数で各2分の1ずつ相続させる。株式数に端数が生じたときはAが取得する。」とするなど権利の物権的移転を明確にする工夫が必要でしょう。 |
Q | 特定相続させる遺言について説明してください。 |
A | 特定相続させる遺言の場合は、遺言者が死亡して相続が開始すれば、遺産分割を経ないで当然に遺言の対象とされた特定の遺産が、指定された相続人に移転します。そのため、遺産分割協議を行わずに、預貯金の解約や移転登記を行うことも可能です。 |
Q | 父が、特定の不動産を長男の私に相続させる遺言をしましたが、私は、この不動産を相続せずに、他の遺産の取得を望んでいます。他の相続人との間で、上記不動産を含めた遺産分割協議ができるでしょうか。 |
A | 相続させる遺言について、遺贈の放棄に関する規定が準用されるかどうかについては、長男に相続させると遺言がされた不動産は、原則として、遺産分割の対象にならないと東京高等裁判所は判断しました(東京高裁決定平成21年12月18日)。すなわち、長男は不動産を相続するしかなく、残りの遺産についてのみ、遺産分割協議をして取得分を決めることになります。しかし、最高裁判所の判例が出ておらず、この問題について実務上の決着はついていません。そうすると、実務的には、本問のように相続させる遺言の対象とされた財産の取得を望まない場合は、共同相続人全員の同意を得て、遺言と異なる遺産分割協議を成立させるのが相当と思われます。その場合には、遺言の存在による後日の紛争を防止する意味でも、遺言の存在にかかわらずこれと異なる遺産分割協議をすることを、遺産分割協議公正証書の条項中で明記しておくとよいでしょう。(?) |
Q | 父は、自宅を長男に相続させる遺言をしていましたが、父が亡くなった際に、長男は既に死亡していました。この場合、長男の子が自宅の相続をすることになるのでしょうか。 |
A | 遺贈については、明文で遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じないとされています(民法994条1項)。その理由は、遺贈が、通常、遺言者と受遺者本人との何らかの個別的な人間関係に基づいてされるものであり、受遺者本人が亡くなった場合にその子に当該財産を遺贈することまでは、必ずしも考えられていないからです。なお、遺言全体が無効になるわけではなく、複数人に対して遺贈する遺言の場合には、先に死亡した受遺者の部分のみ無効となり、それ以外の部分については効力は生じます。また、死因贈与には、原則的に遺贈の規定が準用され、上記の遺贈に関する理由は死因贈与にも当てはまるものですから、贈与者の死亡時までに受贈者が死亡した場合は、その時点で死因贈与契約は効力を失うことになります。なお、これらの場合に、受遺者・受贈者が受けるべきであった財産は、相続財産となり、相続人に帰属することになります。よって、無効となった部分の財産については、別途相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。 |