2017.8.18 借金問題
連帯保証人となった依頼者が主債務者の代わりに支払った賃料を取り戻した事案
事例まとめ
案件概要
義理の弟(B)の連帯保証人になったが,Bは支払いをしなくなり,依頼者(Aさん)に請求が来るようになりました。Bの代わりに支払っているものの,現状に困ったAさんは,Bから回収するため当事務所に依頼されました。当事務所はBに対し訴訟を起こし,Bから分割で支払うという和解に代わる決定を裁判所から得ることができました。
関係者
Aさん:依頼者,Bの連帯保証人
B:義理の弟(Aさんの妹の夫),連帯保証の主債務者
相談時
妹の夫Bが妻と家を借りる際に連帯保証人になってくれないかと頼まれました。
Aさんは義理の弟からの頼みだから仕方ないと引き受けることにし、マンションの賃貸人との間でBの賃料等の支払いを連帯保証しました。
しかし、1年ほど経つとBは賃料の支払いを遅れるようになり、契約の2年後にはついに賃料を払わなくなってしまいました。
Bには十分な財産があるようでしたが、マンションの賃貸人は見兼ねて連帯保証人であるAさんに賃料を代わりに支払うように請求してきました。
Aさんは連帯保証人になってしまった以上、賃料を支払うほかなく、合計100万円ほどの賃料を支払いました。
その後にAさんの妹とBは離婚をしましたが、Bは賃料を自らは一向に払わずにマンションに住み続けるようになりました。
そこでAさんはBの代わりに支払った賃料を回収したいと考え、当法律事務所にいらっしゃいました。
争いのポイント
①AさんはBに何か反論できないのか
②AさんのBに対する求償請求権(支払いを求める権利)はあるのか
①AさんはBに何か反論できないのか
AさんがBさんのためにした連帯保証とは、単なる保証に比べて保証人の一定の権利が制限されている保証契約です。
通常の保証契約では、保証人は債権者から請求を受けた場合に以下の反論をする権利が認められています。
①先に主債務者の方に請求するように反論する権利(催告の抗弁と言います。)
②主債務者に資産がある場合にはそこから回収するように反論する権利(検索の抗弁と言います。)
しかし、連帯保証契約の保証人にはこれらの権利は認められません。
したがって、連帯保証人であるAさんは賃貸人に対して、「賃料はまずBに請求してください」「Bには資産があるから賃料はそこから回収してください」とは反論できないのです。
②AさんのBさんに対する求償請求権(支払いを求める権利)はあるのか
このように負担の大きい連帯保証人ですが、主債務者への求償権は通常の保証人と同様に認められます。
事務所としての活動と解決
当法律事務所はAさんを代理してBに対して求償請求の訴訟を起こしました。
裁判でBはこちらの主張を全面的に認めたため、100万円を毎月5万円ずつ分割払いで支払うとの和解に代わる決定を得ることができました。
担当弁護士のコメント
今回裁判所が出した和解に代わる決定とは、簡易裁判所が被告の資力が乏しい場合に原告の意見を聞いて被告の分割払い等を認めるもので、裁判上の和解と同じ効力を有しています。
Aさんはお金がきちんと返ってくるならば分割払いでも構わないとお考えでしたが、他方で元は親族であったBとの関係がこれ以上こじれることは望まれませんでした。
そこで、Aさんのご意向を尊重し、和解に代わる決定に同意しBに分割払いを認めるという形をとることで、Bとの円満な解決に至ることができました。Bはその後賃貸人との契約を解約し、マンションを出ていきました。