2017.8.17 その他
匿名掲示板への悪質な書き込みを行った相手を特定し,書き込みを削除することができた事案
事例まとめ
案件概要
自身への悪質な書き込みがされていることを知ったAさんは,自力で掲示板の管理人に対してその書き込みの削除依頼しましたが,削除と書き込みをした人を特定することはできませんでした。依頼を受けた当事務所の申立によって,早期にXという人物を特定することができ,書き込みをすべて削除することができました。
関係者
Aさん:依頼者
X:悪質な書き込みをした相手
相談時
Aさんは若くしてA介護施設を開設し、その経営は早くも軌道に乗り、多数の入居者が施設を利用していました。
しかし、ある日、Aさんは匿名掲示板に「A介護施設の経営者Aは偏差値20」「Aは親の金で施設を運営している」等といった書き込みがされていることを知りました。
これらの書き込みの内容は事実無根であり、Aさんは強い憤りを覚えると同時に、このまま書き込みを放置していては施設の評判も悪くなってしまうと考えました。
Aさんは掲示板の管理人に対して削除依頼をしました。
しかし、書き込みがされていたのは匿名掲示板ですから、Aさんには誰が書いたのか特定することができません。
そこで、Aさんは書き込みの削除と慰謝料の支払いを求めて当法律事務所にいらっしゃいました。
争いのポイント
①ネット投稿者の特定方法とは?
②プロバイダ責任制限法との関係
①ネット投稿者の特定方法とは?
通常、ネット書き込みの削除を求める場合には掲示板の運営会社に対して書き込みの削除を請求することになります。
しかし、投稿の削除だけでなく、投稿者に対して損害賠償を求める場合には投稿者を特定することが必要になります。
手順としてはまず掲示板の運営会社に書き込みのIPアドレスの開示を求めます。
しかし、IPアドレスだけでは具体的な投稿者の特定ができないので、続いてプロバイダに対して投稿者の情報開示を求めることとなります。
②プロバイダ責任制限法との関係
ネット上の誹謗中傷や個人情報の流出に対応する法律として、プロバイダ責任制限法(正式名称は特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)という法律があります。
ネット投稿が自由に行えることで投稿者は表現の自由の一環として自由な発言ができる場が増えましたが、他方で、匿名であるがゆえに他人の名誉を棄損する投稿や個人情報を流出させる投稿が後を絶ちません。
この法律はそんな両者の利益に配慮しつつ適切な対応ができるようにプロバイダの責任等について規定したものです。
この法律により、ネット投稿によって権利を侵害された被害者は、一定の条件を満たせば、プロバイダに対して投稿者の情報開示を請求できるようになりました。
事務所としての活動と解決
当法律事務所は裁判所に対して、運営会社とプロバイダを相手方とする発信者情報開示仮処分命令の申立てを行いました。
当法律事務所の申立てによってAさんは投稿者がXという人物であるとの情報開示を受けることができました。同時に、プロバイダはAさんの名誉を棄損する投稿をすべて削除しました。
担当弁護士のコメント
慰謝料を請求することを私とAさんで協議しましたが,書かれた内容の投稿からしてAさんがとれる慰謝料の額は、裁判例からしても数十万円程度であり、Aさんにとってこだわる金額ではなく、他方訴訟を行うと時間がかかりその間も投稿が公開されたままになる可能性が高いので、Aさんは早期の解決(早期の書き込み削除)を優先し、Xへの損害賠償請求等の訴訟に持ち込まずに任意交渉でまとまるようにしました。
投稿はすみやかに削除され、Aさんにはこれで経営に専念できると大変喜んでいただきました。